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川島郁子というひと。

先日編集の先輩や後輩や他社の人を含めて飲んでいた席で、ちょっとした話題として「優しさ」が出てきました。飲みの席だったのでそれ程鮮明には覚えていませんが、編集の先輩は誰に対しても均一の優しさをちゃんと配分できる人だ、とか、それだと特別な人にも他人と同じ優しさでしか接しられない、とか、まぁそんなような話です。「優しさ」と聴いてどうしても川島郁子さんのことを思い出さずにはおれなかったので、今日は彼女について書いておこうと思います。

以前にちゃんと書いたと思ったのですが、どうも見当たらないようです。いい機会なので、書き留めておきます。と思って、書いてみたらすげぇ長くなった(笑)

川島郁子さんとの出会いは高校生の頃なので、既に10年近く経っています。とはいっても、実際にお会いしたのは大学の頃なので2003年、7年前のことですね。高校生の頃は淡路島に住んでいたので遊びに出かける場所はそれほどなく、元々ぼんやりするのが好きなこともあって結構お家にいることが多くありました。そこでしばしば聴いていたのがラジオ。元々中学生から朝日放送の「ミュージック・パラダイス」を聴いていたこともあって、スイッチを入れることにそれほどハードルがあったわけではありませんでした。

ある日のお昼過ぎ、気が向いてスイッチを入れてみたらあんまり面白い番組をやってなかったんですね。朝日放送はその時間帯、学生向けの番組じゃなかったんですよ。せっかくだからと思ってチャンネルを変えていると、聴こえてきたのがKISS-FM。神戸のFMラジオ局で、多分初めて聴いたのは「TOWN CHART」。谷山香さんだったかなぁ。まぁ、とにかく当時のカウントダウン番組だったんですよね。それまで夜に聴いていた「ミュージック・パラダイス」もカウントダウン番組だったんですけど、それとは全く違う番組作りで全く違うランキング。ちょっとびっくりでした。

それからしばらく休日はもっぱらKISS-FMを聴く日々が続いていたのですが、そこに飛び込んできたのが「KISS OCEAN DREAM」。この番組のサウンドクルー(KISS-FMではDJのことをこう呼びます)を務めていたのが川島郁子さん。ビックリしました。彼女のことはそれ以前にやっていた「MUSIC Etrange」を聴いたことがあったので知ってました。ですが、「OCEAN DREAM」と川島さんの声のフィット具合はまさに衝撃。特に、神戸の海にまつわるエッセイをリスナーから募集して、それを音楽とともに朗読するコーナーは素晴らしい以外どう言っていいのかわからないくらいでした。波の音、船の音、聴こえてくるコーナーのタイトルコール。金曜日の2時半から3時、ゆったりとした時間帯にラジオから聴こえてくる川島さんのしっとりとした、耳から体を包んでいくような声に‘酔う’瞬間でした。

この番組を聴いた瞬間、僕は一気に川島さんのファンになりました。落ち着いていて、ブレがなく、それでいて聴いてる人を引っ張ってくれる兄貴分(姉御肌?)なところも。高校生の僕にとって、憧れの人になっちゃったんですね。この当時、それが10年後の今までも続くとは想像だにしませんでしたが。

さて、問題はこの番組、なんと放送日が金曜日ということでした。金曜日のお昼2時からなんて、もちろん授業があって聴けません。しかも、場所は淡路島。送信所のある麻耶山からも遠く、学校は小高い丘を削って作ったようなロケーションで電波状況はイマイチ。席替えで運良く教室の一番窓側の席になり、雑音リスナーながらなんとか電波を確保。制服のブレザーの袖からイヤホンを通し、頬杖つくようなフリをしながら聴いていました。卒業してから友人にそのことを話したら彼は気付いていなかったとのこと。先生はどうだったんだろうなぁ。あ、ちなみに化学の時間。U先生、その節はゴメンナサイ!

「OCEAN DREAM」は、残念ながら高校卒業と同時に番組が終了してしまいます。その後、同じKISS-FMでスタートした新たな番組が「MUSIC ROUTE」。大学に入学してからサークルでDJをはじめていた僕にとって、もちろん一番の目標は川島さんでした。あのしっとりと落ち着いた、それでいて明快でわかりやすいトークはなんとしても身に付けたい。そう考えて足を運んだのが住吉にあった神戸トヨペット。実はこの「MUSIC ROUTE」、神戸トヨペットから生放送されていたのです。

川島さんの喋りだけでなく、そこに至るまでの準備、パブを読み込む姿、番組中の立ち振る舞い、喋る最中の目線、口の開け方、声の出し具合……。プロフェッショナルの喋り手の姿を生で見たのは初めて。いやぁ、テンション上がりました。高校生の頃から聴いていた人が実際に目の前で喋ってるんですから。クリスティーナ・アギレラの曲紹介とか、ほんとやばかったんですよ。

番組が終了した後に、ご好意で川島さんと少しお話することができて、生意気にも当時悩んでいたDJについての心構えやスキルの質問をぶつけました。川島さんは仕事終わりにもかかわらず、一学生の言葉にものすごく丁寧に応えて下さったんですね。

喋るときだけでなく、何をするにしても自分が心がけることをひとつ作るといいよ。

そうおっしゃって下さったのは今でも忘れません。自分の芯になるものをひとつだけでいい、普段の生活の中から動かさずに持っておくこと。

簡単なように見えて、とても難しいことです。この言葉を聴いてから随分経った今でも、恥ずかしながら自分自身それができているのかはとても疑わしいことです。川島さんは続けて、ご自身の芯について教えて下さいました。自分が心がけていることは、「優しさ」だ、と。

自分の喋りで、誰かを傷つけることがあってはいけない。大笑いさせることはできないかもしれないけど、笑顔になってほしいし心安らかになってほしい。だから、とにかく微細な言葉選びから、ニュアンス、抑揚、高低、押し引き、すべてにおいて「優しさ」を心がけられているそうです。

なるほど、たしかに自分自身が川島さんの番組を聴いて感じたあの包摂感は、聴き手に対する確固たる「優しさ」だったように思います。ただ、「優しさ」なるものは非常に厄介なもので、当然個人のとらえようによってはそれが「冷たさ」になってしまうこともしばしば。万人ウケや阿りではなく、誰に対しても「優しさ」と感じるものとは一体どんな感覚なんだろうと考えたとき、ある台詞が頭をよぎりました。

「あの青年は、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ」

この台詞は源義雄、『ドラえもん』に登場するしずかちゃんのお父さんが、娘の結婚前夜に語ったものです。のび太くんの優しさは「人の痛みがわかる」ところであることをバシッと言うんですね。

この映画を見たとき、あぁ、優しさってこういうことなんだなって感じることができました。気が効くとか親切とかとはまた別のもので、個人のとらえ方に関係なく揺ぎ無いもの。川島さんの番組を聴いていると、この「優しさ」がときには温かく、ときには厳しく伝わってきます。

今は京都のα-StationでDJ活動を続けられている川島さん、以前帰省したときにちらりと聴いてもその「優しさ」っぷりはご健在でした。新幹線の中の短い時間でしたが、とても懐かしい気分にさせられました。京都だとなかなか聴くことができないので、最近はもっぱら川島さんのブログを読んでいます。

take a deep breath

ここでも川島さんのお人柄がうかがえるエピソードが盛りだくさんです。お嬢さんとのやり取りが、絶妙に面白い!会社でお昼休みに見て、いつも癒されてます。喋りでも文章でも、川島節は変わりません。

社会人となって、ぜひ1度お仕事したいと思っているのですが、そう上手くもいかず今に至っています。声じゃなくて、執筆もできそうな方なので育児日記とか書いてほしいなぁと本気で思ってるんですけど、ビジネス書版元ではなかなか。

と、まぁ、コワイくらい語るに止まらなくなる川島郁子というひと。なんだか宣伝みたいになってるなぁ。あ、何にももらってませんよ(笑)ほんと、昔から好きなDJさんなのでいちどちゃんと書き留めておきたかったのです。番組ブログでマイケル・ブーブレを紹介しちゃうところも、期待を裏切らないですねぇ。

遠く関東からですが、これからの活躍にも注目しています。

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コメント

私も同じ名前の人を知っていますが・・・優しい!?ちょっと驚きです!角度を変えると人はいろいろですね。

投稿: さち | 2010年4月 7日 (水) 22時34分

>さちさん

コメント、ありがとうございます。

同じ名前の方がいらっしゃるんですね。
ちょっと角度を変えるだけで違った面が見えてくるから、人を知ることはおもしろいことだと思います。

投稿: くま | 2010年4月 8日 (木) 21時39分

残念ながら、同姓同名ではな、同一人物なのです。優しいとは思えませんね~

投稿: さち | 2011年3月22日 (火) 02時25分

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